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2021.03.28 (sun)

レポート

鹿児島×渋谷 クリエイティブシンポジオン<SESSION2>これからのローカルビジネスと働きかた(後編)

▶︎トークセッション テーマ4
どんな条件が整ったら、鹿児島で働けるか?

プロジェクトや仕事を通して地域と関われば、もっと身近で魅力的になる

坂口:僕はもとビジネスというよりは音楽をやっていた人間で、今も片足はそうなんですが旅が多くて。ただミュージシャンの旅は、地域のことは見ないんですよね。今日と昨日のステージのどこが違ったとか、もう回数重ねて覚えてなかったりもして、すごく寂しいんですよね。そういうのが嫌だなと、何かもっと場所のことを知りたいなと思って。 だから移住と言うと、移動して定住って話ですけど、僕の場合はどちらかというと、移動の中に住んでるみたいな、そういう感覚でずっとやってきて。
何か分散型のネットワークの中で… 今はバーチャルですけど、こうやって繋がり合うことで、鹿児島と例えば岡山とか、 茨城と福岡とか、広島と仙台とか。東京を介さず、分散型でやっていけるのはすごくいいんだろうなと思って仕事をしてる感じがあるんです。
ADDressなんかもまさにそういうサービスだと思うんですけど、今日は特に僕は移動中に生活してるけど、やっぱり自分も背中に桜島を背負ってるような意識がどこかにあって、どこに行っても、やっぱりそこを起点に人と繋がっていくようなところがあるんですよね。
そこで最後に皆さんにもお伺いしたいのは、今日は僕は鹿児島にいて、皆さん東京にいて話をしてくださっていますが、どんな条件が整ったら、皆さんのような人たちが鹿児島に行ってもいいなと。移動の中に暮らす、暮らしのスタイルの中に、鹿児島も1つ入るのかなっていうことを聞いてみたいなと思って。 ぱっと思いつきのアイデアでもいいです。
では家入さん!鹿児島に1ヶ月ぐらいすぐ行ってもいいなと思える条件はずばり何でしょう?

家入:何でしょうね。お酒もご飯も美味しいですからね。

坂口:僕はですね、鹿児島は温泉がいっぱいあって。東京だと温泉とかサウナに入った後に満員電車に乗りたくないんですよね。それは鹿児島にはないので、もうそれだけでもいいなと思ったりするんですよ。

九法:鹿児島の宣伝をしておくと、鹿児島ってあの温泉の数は大分に次いで2位なんですよね。街中にある銭湯が全て天然温泉なので、銭湯価格で温泉に入れるという。

横石:問題なのは、この3人が誰もそれを知らなかったってことですよね(笑)

坂口:そうだよね。確かに知られていないんだよね。鹿児島では当たり前すぎてPRする気にすらならないんですよね。このアドバンテージを…。

家入:別府の「湯〜園地」プロジェクトが話題になりましたよね。別府はもう温泉の湯は余るほどあると。その温泉の湯を使って、お湯に浸かったまま観覧車に乗るとか、ジェットコースターのシートにお湯が沸いているとかってYouTubeの動画を作って、100万再生されたら本当にやるんでって言ったら、 本当に100万再生されて。結果的に、税金を使わず、みんなを巻き込んでやろう、ということで、若い市長が音頭をとってクラウドファンディングをやったんです。結果3000万近く集まったのかな。
福岡も高島さんが音頭を取ってスタートアップを盛り上げてることは割とメディアに出て発信されていて、ああいう空気感みたいものって、やっぱりすごい大事だなっていうのは思うんですよね。神輿を担ぐではないけれど、みんなで地域のヒーローをいかに出すかみたいなところも含めて、盛り上がり感を出していくと、そこには行きたいなと思いますね。だから環境ありきっていうよりは、空気感みたいなものかなぁという意見はあるかもしれない。

坂口: なるほど。昨日もそういう話になったんですよ!この地域“キテる感”があるといいという話になりましたね。

九法:柳澤さんが“キテる感”という言葉で語っていましたね。おっしゃってることはすごい近いですね。

坂口:佐々木さん、どうでしょうか?

佐々木:僕も鹿児島について今まで全く知らなかったので、いろいろ調べていたんです。食べ物もおいしいし焼酎もある。おそらく観光資源や観光名所といったものはたくさんあると思うんですよね。そこで、すごく大事なのが、名産品や名所をそのまま提示されても、正直あんまりグッとこない感じがありまして。 伝統的なとか、名物ですとか、これまでのラッピングのされ方をリニューアルしたかたちで提示されると、グッとくるのかもしれないなと思っています。
要は、伝統だけでは、これ自分のためのものじゃないなって思っちゃったりするんです。それを、僕のような30代後半の人向けにあった差し出し方、ラッピングの仕方をちょっと現在の形に変えていただくと、グググとくるものがすごくありそうだなと思いましたね。
ひとつ事例を紹介すると、島根県日祖という限界集落に「HISOM(ヒソム)」っていう、日本家屋を改装した1軒家がありまして、ここはフィンランドの大使館などと連携をしていて、そこに行くとフィンランドの方が地元の料理、地元の食材を使ったフィンランドの料理を作っているんですよ。なんか急に島根の限界集落にフィンランドが現れた!みたいな感じなんですけど、島根らしさを出しながら、すごく海の感じとかがフィンランドに近かったりするみたいな。そういうコンテクストで提供されているようです。そんな面白い味付けみたいなところで、絶対に東京では味わえないみたいなところがあると、すごくそそられるなぁとは思いますね。

坂口:コンテクストをいい意味で脱皮させるというか、意外性とかギャップですかね。

佐々木:東京の劣化コピーみたいになると、また残念になっちゃう。 やっぱり鹿児島らしさみたいなものを上手に残しながら、新しくラッピングされると、そそられると思います。

坂口:なるほど。働き方お兄さんの横石さんはどうですか?

横石:コロナになってから僕も地方都市や行政からお声掛けいただくんですよ。どうですか?住みませんか?と。でも移住は重いなと。ただ違ったかたちでその場所に行けばすごく好きになるので、何か違ったかたちで行きたい。
僕の中ではふるさと納税も参加の仕方が薄いと感じてしまうんです。何か “ふるさと労働 ” というような、そこの地域とプロジェクトを作ったりしながら、行き来する関係を作りたいなと思うんですよね。だから、鹿児島に行くのも環境や食べ物はもちろん大事なんすけど、SNSを通じて人に会いに行くような感覚で、その場所と触れ合いたいっていう思いは結構強いですかね。 消費者として参加するではなくて、本当は同じ立場の生産者っていうと語弊があるかもしれないですけど、一緒にそのまちを作っていく1人として関わりたいみたいな思いは強いですよ。

坂口:そうですね。やっぱり何か理由で呼ばれたり、オンラインで繋がりができると、それこそ精神的な距離が短くなって、きっと行きやすくなるんですよね。パッとと行こう!という気にもなる。それで行ってみると、ものすごい遠いと思っていたけど 1400kmの距離は大したことないなって思えるようになったりするんです。プロジェクトを通して、精神的な距離が近くなるってことは、要は関係人口化していくと思うのでそういうことなんでしょうね。
今日をきっかけに、ちょっといろいろとプロジェクトを作って、皆さんにじゃんじゃん来てもらえるように、物理的に来れなくても、こうやって繋がりが続くような何かをやっていけたらいいなと思ったところです。

 

▶︎質問コーナー 1
都市と地方にまたがって、副業・兼業できるような環境をつくるために必要なものは?

場所にしばられない働き方が選択肢を広げる

MC:コロナで需要が増えた産業と需要が減った産業の差が大きくなっていることもあり、副業・兼業の価値が高まっていくのではないかと考えていますが、今後、地方と都心にまたがって、副業・兼業できるような環境を作るために必要なものってどのようなことが考えられますか?

坂口:働き方お兄さんの横石さんからお願いしましょうか(笑)

横石:これはもう間違いなく増えますよね。副業・兼業の波っていうのは、もうかなり大きくなってきていますし、むしろせざるを得ないっていう企業さんも出てくると思います。そのときにポイントになるのって、今まではワークやオフィスがあって自分の住む場所が規定されていたと思うんです。本社のここに勤めなきゃいけないから、この近辺で家を探そうっていう。それが逆になるってことだと思うんですよ。副業ができる、本業と副業ができる場所ってどこだろうかとか、本業もオフィスから離れていいよとなった場合は、ライフから考えるっていうことになるので、ライフに近い副業とか兼業みたいなものが、もしかしたら、より重要になってくるのかもしれないなと思いました。
なので、必要なものは何かっていうと、まずライフを考えることですね。これは家入さんの話とも重なりますが、ワークから考えるよりかは自分の哲学みたいなことですね。自分のアイデンティティとか哲学と向き合うっていうことが、実は近道ではないかなと思いました。

佐々木:副業は、自分の体を使うよりは、頭を使う仕事のほうが多くなるんですかね。僕も今はTakramをやりながら「Lobsterr」というメディアをやっていたり、スタートアップの社外取締役とかやらせていただいているんです。ビジネススクールで教えていたりとかもしているので5つの名刺があります。 Takramの仕事も今はほぼオンライン化してるので、どんどん土地と切り離されてるなって感じています。そうすると、自分がどういう生き方をしたいかってところがベースにあって、それから考えていく感じになるんじゃないかと思いました。
そうなると必要なものって何ですかね?パソコンとネット環境さえあればどこでもけやっていけちゃいますよね。副業の話と、地方と都市の話は結びつけずらいなとは思います。まず副業は増えてくるかどうかというと間違いなく増えていって。ある種、知識を扱うような ビジネスであればどこでもいけるんじゃないかなとは思います。

坂口:なるほど。家入さんは副業ってどう思われていますか?

家入:CAMPFIREに関しては副業も兼業もOKになっていて、宮崎と福岡で働いているメンバーがいるんです。東京のメンバーも今はほぼオフィスに出社していないので、それこそ鹿児島でっていうメンバーがいてもおかしくないかなとは思います。コロナでより副業が加速したって感じはあります。会社としても、今後の採用とか人材確保を考えると許容していかないとですよね。こういった意識を持った会社がもっと増えていくことがすごく大事かなという気はします。
それぞれがまだ手探りでやっていますよね。例えば仕事をどう管理するのかとか、本当にその時間毎日仕事をしているのかとか、見えなくなっちゃうので、各社が手探りでやっているここからもう少ししたら、ノウハウなどを含めて出てくると思うので、それがまた標準化されていくと、いいのかなという気がします。

坂口:なるほど。手探りの中でボトムアップしながらも、自分の暮らし方から、働き方を立ち上げていくみたいなイメージなのかな。九法さんは会社もやりつつ、フリーランス的な動き方もされていますよね。副業についてどういうお考えですか? 

九法:副業と本業みたいな区別っていうものがなくなるのだろうなという感じはします。結局それもどんな人と働くかっていうところなのかなというふうに思います。僕自身、今会社をやってますけれども、その会社以外の仕事を副業としてるかっていうと別に副業ではなくて、そのあたりはゆるく運用しています。
自分が向かっている方向が同じような人たちと、たまたま働けていてそういうかたちにしていますが、もしまた別の人たちと何らか繋がりながら働きたいと思ったら、そっちで3割ぐらい働いくとか。流動的なチームを組みながら働いていく流れに、僕自身もなっていくと思っています。世の中的にもそういうふうになっていくんだろうな、という感じがすごくしますね。

▶︎質問コーナー 2
行政と民間企業がよりよい関係を築きながら、連携して盛り上げていくには?

組織の看板にとらわれず、“人と人”として思いを伝え合う

MC:もう一つ質問があります。ローカルで真新しいプロジェクトを立ち上げようとすると、自治体と民間企業との連携が取りずらい印象を受けます。よりよい関係性を築きながら地域を盛り上げていくには、どうしたらよいでしょうか?民間と自治体との関係性作りというのは、地域によっても違うでしょうけれども、いかがでしょうか?
坂口:なるほど。限られた時間の中で難しい質問がきましたね(笑) 地方自治体とプロジェクトをされてることが多いと思うので、家入さんにズバリお伺いします!

家入:これってこういう文脈だと、どうしても自治体側が悪いみたいな話にもなりがちだと思いますが…..どうしたらいいんですかね。

少し話がずれますが、オープンイノベーションは一時期話題になりましたよね。今ももちろんありますが、要は大企業がその新しい事業や課題をどう解決するのか、スタートアップを含めてやっていくみたいなときに、コンテストとかブレストまではうまくいくけど、そこから先、本当にやるかというところで、終わってうまく行かないみたいなケースが多いですよね。 どうしてかというと、やっぱり看板を背負ってきてしまうっていうところがあるんですよね。
大企業の中の人はすごく課題意識があったり、本当に変えたいとかやりたいという思いはすごくあるけど、いざ進めようとすると、どうしても決裁が通らなかったり、大企業の看板背負ってやっちゃうので、なかなか対等にならない。スタートアップも大企業相手だから忖度しちゃうとか空気を読んでしまうみたいな感じで、うまくいかないようです。
だから、一人間と一人間がうまくいったりするように、何かそういった空気感を作っていくってことなのではないかなと思います。

坂口:大きい主語で語ると難しくなるんですよね。大企業の看板とか、自治体とか。それよりも小さい集合のように、その担当者の思いみたいなもので突破していくっていう。

家入:そうそう。自治体の中にもやっぱり、課題意識を持った若い方とかもいるので、そういう方々と話すと本当にいろいろとリアルな声も聞けますし、突破できる方法とかを一緒に探してくれるので、何かそういったところですよね。

坂口:そこに一つ、突破口があるかもしれないですね。

▶エンディングトーク
本日の感想と鹿児島へのアドバイス

MC:今日は「これからのローカルビジネスと働き方」をテーマに、様々なお話を伺ってまいりましたが、最後に皆様にこれからの鹿児島のクリエイティブシーンを盛り上げるためには、 どういう風にこれから生かしていけばいいのか、アイデアをいただきながら感想をお伺いしたいと思います。

横石:はい、ありがとうございました。すごい楽しかったです。僕は働き方における時代の流れとして、キャッスルからクラウドに向かっていると感じています。「キャッスルワーク(お城型の働き方)」というのは、まさにオフィスですよね。クラウドというのは、クラウドコンピューティングの雲という意味でもあるし、群衆の意味合いもあります。今後もこのような組織から個への流れは加速していくでしょう。

そして、このトークセッション中にふと思ったのですが、明治維新において江戸城っていうキャッスルを新しく再定義したのが薩摩藩だったなと。薩摩という存在は時代の流れを変える役割なのかもしれません。これからこのイベントや取り組みをきっかけにして、日本が変わっていくと面白いですよね。さまざまなヒントをもらいました。ありがとうございました。

九法:最後にまたうまいことを言うなぁ(笑)

佐々木: 今日は機会をいただきありがとうございました。来年もしこの機会があれば、来年は鹿児島に行ってやりたいなと思って。1回行ってみると変わるかなと思いますし、横石さんが鎌倉いらっしゃるとか、軽井沢に移住してる人が多いみたいなのを聞いて思ったのが、1人ではなくて、5人とか10人面白い人が集まっているだけで、だいぶあの街の雰囲気、それこそ“キテるぞ感”が出てくると思います。
こういうイベントとかで面白い人を集めて行けるといいな。僕も機会があればぜひ行きたいなと思うんです。まず、自分が行って関係をもったところから盛り上げたい、サポートをさせていただければいいなと思いました。本日はありがとうございました。

家入:地域によって様々な特徴があったり、それこそ同じ人間でも、いろんな特性もあったりして面白いなと思うんです。この地域いいなって思う場所は、僕から聞かなくても、まちの魅力を語ってくれる人がめちゃめちゃいる地域ってあるんですよね。一方で「うちの県なんか駄目だよ」みたいなことを言う意見もあったりする。それで言うと、やっぱり魅力を語ってくれる人たちが多い地域ってすごく魅力的だし、それこそ、こういうところで生きるってのもあるのかなって思ったりもするんです。
なので、ぜひぜひ鹿児島を語る人たちがもっと増えていくと、その魅力も含めて伝わっていくでしょうし、鹿児島が盛り上がっていくのかなという気がしています。クラウドファンディング、CAMPFIREやBASEを使って、本当に小さなアイディアでも最初の一歩が踏み出しやすくなったと思うので、何かそういったところで魅力を伝える活動、経済活動を始めてみるっていうのもあるかなと思います。ぜひ使っていただけたらなと思います。

九法:今日は皆さん、ありがとうございました。僕は昨日から続けて2日間出させていただいたのですが、今の家入さんの話にあったように、もっと鹿児島のことを語っていきたいなって改めて思いました。それこそ昨日も話したんですけど、次回はぜひ鹿児島でやりましょう!それで 鹿児島の人たちがむしろ東京に来てもらって、東京の人は鹿児島に行って、それで鹿児島×渋谷クリエイティブシンポジオンをやるのがいいんじゃないかって。ぜひ変えてもらって、そうすると新しい何かが生まれるかもしれないなと思ったりもしたので、また来年も皆さんにお付き合いいただければと思います。ありがとうございました。

坂口:本当に楽しい話でまだまだ続けたいところですが、今日は第三極っていうバーチャルな空間にいたけど、確かにそこに新しい空間が生まれて、それが一つの何か自由を生むような気がして、すごく楽しかったです。
皆さんの話からこの第三極もうまく使って、プラットフォームなどもうまく使って、ローカルのビジネスの働き方っていうのは、本当に暮らし方とか生き方が、とっても問われる時代になるんだろうなと感じました。分散型のネットワークの中、みんなの小さな物語が交差するところの集合体がすごく盛り上がっていくし、そういうとこのハブのひとつが、今まで東京がメインだったんですけども、これから鹿児島っていう可能性も出てくるでしょうし、そういう何かワクワクするような話がいっぱい聞けて、すごく楽しかったです。またぜひ集まりましょう。リアルでもオンラインでも、この空間の中で集まれればなと思います。ありがとうございました。