マークメイザンビジネストーク!鹿児島の投資家が考える鹿児島のポテンシャルとは?
2025年6月25日、マークメイザンビジネストークと題して「鹿児島の投資家が考える鹿児島のポテンシャルとは?」を開催しました。登壇者は『かごしまスタートアップ支援ファンド』のファンドマネージャーであるチェンジ鹿児島の中垣雄氏と、その投資先であり『かごしまぐるり』を展開する株式会社オービジョンの大薗順士社長。彼らは鹿児島のポテンシャルについて、どのように考えているのでしょうか?
会場には経営者や会社員、自営業や学生、自治体の方など40名以上の方にお集まりいただきました。鹿児島を盛り上げたい志を持つ方が多方面にいることが分かります。
応援すべきスタートアップとは
はじめに中垣氏には鹿児島での3年間の活動を振り返り、鹿児島のスタートアップの現状や鹿児島の強みについて語っていただきました。
中垣氏は大学を卒業後、三菱UFJ銀行に入社。その後証券会社で有望なスタートアップの発掘・支援・上場に携わったことでスタートアップに強く関心を抱き、起業家へと転身。株式会社ビーキャップを設立し、2年で株式会社チェンジに会社を売却。その縁で「鹿児島を元気にする仕事をやらないか?」と誘われたことをきっかけにチェンジ鹿児島を設立。
中垣氏が考えるかごしまスタートアップ支援ファンドの存在意義は3つ。
①成長志向の会社に借入以外の資金調達をすること
中垣氏は、創業期に大きな資金を獲得することで、早期の高成長が実現できると言います。しかし鹿児島には創業期にリスクをとれる金融機関が少ないのが現状。「そこを担いたい」と力強く語ります。
②鹿児島らしい地域に貢献する企業を育てること
鹿児島は一次産業が全国レベルで強いのが特色。中垣氏はこういった地域の強みを活かした「鹿児島でやるから意味があるビジネス」を重視して投資していると語ります。
③鹿児島の若者に新しい選択肢を作ること
若者の県外流出が続く鹿児島県。その理由は様々ですがスタートアップによって解決可能なものもあると、中垣氏は考えます。中垣氏が考えるスタートアップとは「スタートアップ型の思考を持った経営者がいる会社」。「そのような会社を鹿児島に一社でも多く作ることができれば、県内に残る若者が増えるのではないか」と中垣氏は期待を込めて語ります。
様々なデータを交えながら鹿児島の現状についてお話しいただきました。鹿児島の課題や現状を冷静に見つめながらも、鹿児島を盛り上げたいという情熱が込められた中垣氏の言葉には説得力があり、参加者も自然と引き込まれていきます。
ここまでの話から、中垣氏が考える「応援すべきスタートアップ」とは何かが見えてきました。
そのなかで魅力的だと語られた会社の一つが、今回のもう一人の登壇者・大薗社長が代表を務める株式会社オービジョンです。この会社は中垣氏が鹿児島に来て初めて投資した会社でもあります。オービジョンは、農産物特価のD2Cサイト『かごしまぐるり』を運営。中垣氏が特に評価するポイントは、①生産者のコスト負担②生産者の労力③広告費用、がすべてゼロというところです。
そんな魅力的な事業を手掛ける大薗社長の話に注目が高まります。
『かごしまぐるり』の歩み

南九州市の農家の長男として生まれた大薗社長。農業の魅力を感じる一方で、収益化の難しさや農家の高齢化といった課題を感じていたと言います。大学卒業後に入社した大手通信販売会社でネット販売のノウハウを学び「生産者のために何かできることはないか」と一念発起。2021年「鹿児島の生産者の”明るい未来を創り出す」ことを理念に起業し、『かごしまぐるり』を通じて鹿児島の魅力を発信しています。
最初は自宅の一室から一人で始めた『かごしまぐるり』。事業を続けるなかで「もっと魅力を届けられる」と思った頃、中垣氏と出会います。
中垣氏は、大薗社長から提示された事業計画を「全然だめ」と突き返したそうです。しかし大薗社長はわずか3日後には修正して再提出。事業計画を返されて断念する人が多い中、何度でもすぐに修正して持ってきたその姿勢が、特に印象に残っていると言います。
中垣氏の出資を受けてから約3年が経ち、売上規模は約6倍にまで成長。現在も中垣氏とは毎月メンタリングを行い、単なる資金支援にとどまらず幅広い観点からアドバイスを受けているそうです。大薗社長は中垣氏の存在を「良き兄貴」と語り、お二人の深い信頼関係が感じられました。
かごしまの一次産業に広がるチャンスと課題
『かごしまぐるり』を利用した農家の方々からは効果を実感して喜ぶ声も多く、「もっと自分たちで発信したい」「新しい品目や商品を作りたい」と前向きなマインドが広がってきていると言います。「いい循環が生まれつつある」と手ごたえを感じている様子が印象的でした。
中垣氏も「農家同士が横でつながり、新しいことに挑戦して成功体験を積み、それを標準化していくことが大事」とコメント。
一方で鹿児島の課題として、「鹿児島のものは全然全国に知られていないと感じる」と大薗社長は指摘。
中垣氏からは、鹿児島の生産農業所得が全国最下位とのデータが示されました。せっかくいいものを作っているのに正当に評価されず、安くで買われてしまっている。お二人の口から「悔しい」と熱のこもった言葉がこぼれます。
お二人の話を聞いて、まずは県民である私たち自身が鹿児島の農産物の魅力や価値をもっと知り、誇りを持って発信していく必要があると気づかされました。
鹿児島には魅力あふれる若者がたくさんいる
若者の県外流出が続いているというデータとは対照的に、大薗社長のもとには「入社したい」という若者からの問い合わせが増えていると言います。
人手不足と言われる鹿児島。中垣氏は「本当にそうか?」と疑問を投げかけます。若者にとって魅力がある事業や成長性、社長のメッセージがあれば人は来ると中垣氏は言います。
大薗社長も共感を示したうえで「自分たちも鹿児島に魅力的な会社があることを発信して伝え続けていきたい」と意気込みを語りました。
一見厳しい意見にも聞こえますが、これはどうしようもない課題ではなく、工夫次第で解決できる課題だということ。希望と責任を感じさせられる力強いメッセージに気が引き締まる思いがしました。
鹿児島の明るい未来に向けて
最後に、中垣氏から参加者に向けたメッセージが送られました。
「農家や水産業の担い手の高齢化が進んでいる。このままでいいのか?」鹿児島が誇るせっかくの一次産業。他分野でビジネスをしている方も、何らかのかたちで一次産業に関われないか、一度考えてもらいたいと呼びかけます。
そして、鹿児島でスタートアップ支援をしている人に向けて「露骨にえこひいきしてほしい」と語ります。すべての会社に等しくサービスを届けるのではなく、「この会社を伸ばせば鹿児島のためになるという会社に、お金だけではなく、人の紹介やアイデアも含めた”ひいきした”支援をお願いしたい」と呼びかけました。
鹿児島の未来を本気で考える中垣氏の思いと強い意志がひしひしと伝わってくるメッセージでした。
参加者の関心と期待が見えた質疑応答
対談の後には質疑応答の時間が設けられました。
「農業は魅力がある一方で新規参入の障壁が高いと感じる」という率直な感想や、「一次産業でこれから注目すべき素材は?」といった鹿児島での今後のビジネスチャンスを見据えた質問があり、参加者の問題意識と鹿児島への期待の高まりが感じられました。
また『かごしまぐるり』の今後の展開に関する質問も複数寄せられ、多くの関心が集まっている様子がうかがえました。
そして中垣氏からの力強いメッセージをもって、イベントは幕を閉じました。
「今、僕らは非常に重要な世代を生きている。この先鹿児島に生まれる人たちの環境がどうなるか、どんな県になるかは僕らの双肩にかかっている。」
鹿児島の未来を担う責任と希望が、参加者の胸に刻まれたのではないでしょうか。
挑戦するための学びと勇気をmark MEIZANで!
鹿児島のこれまでとこれからについて熱いトークが繰り広げられた90分間。
鹿児島の課題を突きつけられ、背筋が伸びるようなお話もありましたが、それ以上に鹿児島の可能性を感じられ、希望が広がる時間となりました。
参加者からは「中垣さんの考え方や物事の捉え方が面白かったです」「県民の私にはない、気付けていなかった課題や着眼点を頂き、勉強になりました」といった声をいただき、参加者にとって学びと刺激に満ちた時間になったことがうかがえます。
そのほか「故郷鹿児島出身の身として、大変勇気をもらいました」との温かい感想も寄せられました。中垣氏と大薗社長の力強くも鹿児島愛を感じられるお話に、勇気づけられた参加者も多かったのではないでしょうか?
mark MEIZANでは今後も皆様のビジネスや挑戦を後押しできるようなイベントを開催してまいります!講演やディスカッション、交流会など様々なかたちでお届けするなかで、事業に直接役立つ情報はもちろん、挑戦し続ける方々の考え方やマインドに触れられることも、イベントの大きな魅力です。
その刺激はきっと、次のステージに進むエネルギーになります。ぜひmark MEIZANにお越しください!