2025.7.17 Thu

LINE開発のエキスパートが語る LINEミニアプリ x LLM 最前線~ Tech Surfers Vol.3 ~

2025年7月10日に開催された『LINE開発のエキスパートが語るLINEミニアプリ×LLM最前線』では、エンジニアやクリエイター、専門・コンサル、学生など20名以上の方に参加していただきました。

今回の登壇者は、株式会社グランドリームの創業者であり、代表取締役兼エンジニアの山下徳光氏。Web業界で10年以上の経験を活かし、LINEを活用したシステム開発を手掛けておられFます。2023年にはLINE社の認定専門家である「LINE API Expert」に選出。現在はLINEとAIを組み合わせたソリューション開発に注力している方です。

LINEミニアプリとMessaging API入門

本イベントでは、LINEを活用したアプリ開発の魅力や活用方法について紹介が行われました。まず「LINEを活用したアプリとは何か?」という基本的な理解から始まり、この後の内容を支える基盤として、重要な技術概念が紹介されました。

LINEを活用したアプリとは、LINE開発者向けAPIを利用して構築されたWebアプリのことという定義から入りました。この仕組みは、既存のLINEユーザー体験に自然に溶け込むかたちでサービス提供できる点が大きな特徴です。ここでは特に重要として「LINEミニアプリ」と「LINE Messaging API」の2つの技術が取り上げられました。

LINEミニアプリは、LINEブラウザ内で動作するWebアプリで、LINE Frontend Framework(LFF)と呼ばれるSDKを活用することで、WebアプリをLINE上でミニアプリとして展開することができます。ユーザーは新たなアプリをダウンロードする必要がなく、LINEだけで完結するスムーズな利用体験を得ることができます。

一方、LINE Messaging APIは、LINE公式アカウントに紐づくメッセージ関連のAPIであり、ユーザーからのメッセージが企業のサーバーに届き、そのメッセージをトリガーにしたプログラムによって自動返信やカスタマイズされた案内が可能となるしくみです。これにより、柔軟で効率的なユーザー対応を実現できます。

導入するメリットとしては、国内ユーザー約9,800万人の巨大なプラットフォーム上でサービスを展開できる点に加え、メールに比べて約3倍の開封率を誇ること、そして顧客との継続的な接点の確保が挙げられました。

ユーザー体験の面では、アプリのダウンロード・インストールが不要で、LINE IDとの自動連携によって、ログインやアカウント登録といった煩雑な操作を省略できるため、導入ハードルも非常に低いことが分かりました。

今後の応用紹介やユースケース検討に向けた第一歩として、LINE APIを用いた開発の基礎知識と全体像を整理する、まさに“入口”となる内容でした。

生成AIの仕組みと可能性:最新モデルと実用例から読み解く

急速に注目を集めている「生成AI」。これを当日の2つ目のテーマとして挙げられた「生成AI」について、技術的な定義からユースケースまで幅広く解説が行われました。

山下氏によると、生成AIとは、大規模言語モデル(LLM)を核とした技術であり、膨大なテキストデータを学習することで、人間のように自然な言語を理解し、生成する能力を持つと説明されました。「大規模」とされる背景には、圧倒的な学習データ量、学習ステップの多さ、そして高度な計算資源の投入があるとのことです。

また、従来のAIが特定用途に特化していたのに対し、生成AIは翻訳・要約・質問応答・創作など多様なタスクを1つのモデルで柔軟に処理できる点が特徴であり、文脈の理解力や創発的能力にも触れられ、「人間らしいコミュニケーションを実現する技術」として注目されていると強調されました。

ユースケースとして紹介されたのは、以下のような実際に開発・活用されているプロジェクト群です。

AIコードエディタの「Cursor」、アプリケーション生成の「Replit」、AIエンジニアの「Devin」、動画生成の「Veo3」、音楽生成の「Suno」、そしてWeb音声UIとLLMを接続して予約業務を代行する「CSエージェント」など、いずれも生成AIの多様性と実用性を裏付ける事例でした。

代表的なLLMサービスと導入ポイントの比較

続いて、代表的なLLMサービスについても比較検討されました。OpenAIのChatGPTは対話型AIの先駆けとして知られ、GoogleのGeminiは長文ドキュメントの処理に優れ、コストパフォーマンスでも高評価を得ています。AnthropicのClaudeは、コード分析に強く、プライバシー保護にも配慮された設計が特徴的です。

さらに、LLMモデルの分類についても触れられました。用途に応じて、「複雑な思考処理に優れた推論特化型」「幅広いタスクに対応する汎用・高性能型」「応答速度やコスト効率を重視した軽量モデル」という3つの系統に分けられており、目的に応じた選定が重要です。

最後に、LLM APIを導入・開発するうえでのポイントとして、モデル選択、関連処理の単体試験、セキュリティの設計、監視体制などが挙げられ、実装に向けた具体的な準備の重要性も強調されました。生成AIの技術的な理解を深めるとともに、今後の実用展開に向けた視野を広げる構成となっており、後続の具体的導入事例や開発戦略にスムーズにつながる内容でした。

リアルな音声体験で深まるCSエージェント理解:視覚・聴覚からのアプローチ

後半のセッションでは、CSエージェント for 歯科医院のCALL-DEMO音源を実際に聞く機会が設けられました。音声を通して顧客応対のニュアンスや操作感がよりリアルに伝わり、システムの理解が一層深まった印象です。さらに、LINE機能の紹介やCSエージェントのシステム構成図が共有され、視覚と聴覚の両面から体験することで、抽象的だった機能が具体的にイメージできるようになりました。

こんな質問、出ました!リアルなやりとり一部ご紹介

イベント後半には質疑応答の時間が設けられ、参加者から登壇者へ活発な質問が寄せられました。

一部内容をご紹介します。

Q:サービスメッセージはセグメントを設定して配信もできるんでしょうか?

A:サービスメッセージは基本的に1to1となっていて、商品を購入した、順番待ちの順番を通知するとか1to1のメッセージになるのでセグメント作成は出来ないですね。

Q:LINEミニアプリで、予約システムを作っているのですが、ユーザー側(予約画面)と管理側それぞれチャンネルを作成して、申請しないといけないのでしょうか。

A:ユーザー側だけでいいかなと思います。例えば予約の結果を、管理者が見るであるとか、管理者が予約を見て何かしら予約が完了したというチェックを点けるいわゆる管理画面といわれているようなものに関しては、LINEとは一切関係ないWebアプリケーションになりますので、フロント側と管理側という二つのシステムを作ることになります。

次回はあなたの番です!mark MEIZANでまた会いましょう

LINEを活用したアプリの仕組みや生成AI の可能性について、基礎的なところから専門的なところまで知ることができた有意義なひと時でした。

今後もmark MEIZANは、個性と専門性あふれる登壇者や多彩なイベント、そしてコミュニティの拠り所として、新しい挑戦とつながりを育んでいきます。次回のイベントにも、ご期待ください。ぜひmark MEIZANにお越しください。

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