「 “実務で使える”デザインワークでのAI活用術」が開催されました!
2023年11月20日に「”実務で使える”デザインワークでのAI活用術」と題したイベントが開催されました。講師に株式会社ディーゼロの日高 信生さんをお迎えしました。
「明日から制作現場の実務で使える」ことに主眼をおいた、当イベント。
はじめに、日高さんからも「今日は、AIを”どのような場面でどういう風に使うか“という視点から、皆さんのお役に立てるようなお話をしていきたい。」とイベントへの思いが語られました。
生成AIは実務で使えるのか?
著作権の話題に入る前に、「そもそも、生成AIが実務で使えるのか?」という話題について。
事前に生成AIを活用して加工された画像をもとにお話いただきました。
「写真=リアルを写しだすものという風に考えると、実際に実務でこのようなことをする(生成AIを活用したフェイク画像を使用する)というのはあまり機会がない。だからこそ、フェイク画像の利用判断、制作準備、見積もり、お客様とのコミュニケーションなど、「AIを使うことで何がどう変わるのか」を見ていくことが重要」と述べられました。
実務で注意すべきAI活用のポイントを押さえたうえで、早速本題へと移ってまいります。
1. AIと著作権
まずは、AIに関する著作権のお話から。
日高さんは「近年におけるAI開発加速の背景として、『権利制限規定』の変更が挙げられる。」と述べます。
続けて、「情報解析に役立てる目的であれば許諾なしで(使用して)OKといわれている。この『情報解析』には機械学習も含まれていて、こうした背景からAI開発に著作物を利用しやすくなったといえる。」といいます。
AIの種類と著作権
AIの種類に関して、日高さんは「生成AIと従来AIの二つにわけると分かりやすい。」といいます。
生成AIは、学習データをもとに、全く新しい情報をアウトプットするAIのこと。 もう一つの従来AIは、 学習データをもとに、 識別や予測といった決められた行為を自動化したAIのことを指します。
そして、AIが開発の段階・利用の段階に分けられることについても言及されました。開発の段階では、享受を目的としない場合、許諾が不要ということ、許諾の有無に関する判断基準については、従来の著作権に対する考え方と変わらないことをお話しいただきました。
また、生成AIに関して「AIが自律的に生成した場合は著作物に該当しないが、人が創作表現のために詳細なプロンプトで意図した場合は、自らの著作物として該当する。」とのこと。著作権については、これまで以上に知っておく必要があることが分かりました。
生成AI 主要ツールの権利状況
以上を踏まえ、より実践的な内容として、主要ツールや主要ストックフォトサービスにおける生成AIの権利状況、生成素材の取り扱いに関する説明がありました。
2023年11月現在、Adobe、Midjourney、Stable Diffusion、ChatGPT(DALL-E 3)は全て商用利用可となっており、学習データの著作権に関してはAdobeのみがクリアとされています。ただし、「権利侵害が発生するリスクはゼロではなく、生成物に対する著作権などは国の法制度によっても変わってくるため、国を超えた仕事や規模の大きな仕事の際は特に注意が必要。」と述べられました。
AIと著作権 まとめ
AIと著作権に関するまとめとして、「まずは権利制限規定に該当するかどうか。一度、規定の中身をチェックしてみると、新しく仕事の中で役立つことがあるかもしれない。」と日高さんは述べます。続けて、「類似性のチェックや商品利用の可否などは今まで通り気をつけたいところ。加えて、自分自身が著作者になる可能性があることも一つポイントとして挙げられる。」と語られました。
これからも議論がなされていくであろうAIと著作権。AIを扱う場合は、今まで以上に著作権について学ぶ必要がありそうです。
2. AdobeのAI
続いては、今回のハンズオンでも使用するAdobeのAIについて。
はじめに、Adobeの人工知能・機械学習の開発プラットフォームであるAdobe SenseiやAdobeツールのAI機能に関する解説が簡単に行われました。
また、生成クレジットに関しても紹介がありました。AdobeのAI機能では、生成ボタンを1回押すごとに1クレジットが消費されるような形式が取られており、上限が設定されているため、“使いたい放題”ではないそう。
最近のトピックス
ハンズオンのワークへ移る前に、日高さんから最近のAIツールに関するトピックスが挙げられました。
最初に大きなトピックスとして挙げられたのが、Fireflyのアップデート。「非常に画像生成がしやすくなった。」と日高さんはいいます。続けて、「プロンプトのサジェストが行われるようになったり、参照画像をもとにそれに似た画像が生成されたり、指定から外したい言葉を反映したりと、これまでのFireflyから相当に使いやすいAIに進化した。」と語られました。
また、Illustratorに生成AIが実装されたことも話題に上がりました。
「実際に思ったように画像を生成することは難しいが、(下図にあるように)スタイル抽出によって元画像を再生成することで、よりイメージに近い画像を生成できることもある。」といいます。そのうえで、「この辺りの機能を実験として使ってみると、割と思っていたような生成が出来るようになるかもしれない。」と述べられました。
これらを踏まえ、いよいよハンズオンでのワークに取り組みます。
3. ハンズオン形式でのワーク
イベント後半では、前半にご説明いただいた内容も踏まえつつ、実際にPhotoshopやIllustratorを操作しながらAI活用ワークに取り組みました。
10枚ほどのサンプル画像を実際に扱い、デザインの実務で使うシーンを想定しながらご紹介いただきました。
01-Photoshop : 拡張生成
まずは、Photoshopにおける生成拡張の手順から。
画像の横幅・縦幅を増やしたい場合に生成を使用することで、違和感なく画像の拡張を行うことが可能に。
一度の生成につき、3パターンの生成バリエーションが用意されるため、好みの1パターンを選択することができます。
02-Photoshop : 空を置き換え
続いて、空の置き換え機能を活用したワークへ。
〈編集〉から〈空の置き換え〉を選択すると、簡単に夕焼けや青空など、バリエーション豊かな空のイメージが出てきます。
「あまり天気の良くない写真撮影の際に、青空を入れることも業務の中であったりすると思う。そんな時に、(この機能を使うと)ほぼそのまま業務で使用しても問題ないくらいの置き換えが可能になる。」と日高さんは述べます。
03-Photoshop : 画像の拡大、カラー化、生成塗りつぶし
ハンズオンも中盤。今度は3段階でAI機能を活用したワークに取り組みます。
まずは、元画像の拡大。元々のサイズが小さい画像のため、この際、画質をある程度維持したまま拡大を行います。
次に、画像を自動でカラー化。最後に油絵のタッチへと生成を行います。
日高さんからは「どのような指示を出すかによってはかなり使える技。ゼロのキャンパスから画像を生成することもできるが、狙った構図や見た目を生成するには、元画像から生成をするやり方のほうが上手く行く場合もあると思う。」と語られました。
04-Photoshop : 削除ツール、角度補正と拡張生成
例えば、下図のBefore画像から、余分な物を削除したり、01のように画像を拡張したり、傾きを補正したりすることも、AIツールを活用すれば簡単に行うことができます。
冒頭では天井のみの拡張生成でしたが、人が写っているような複雑な画像であっても拡張生成が可能ということに驚く参加者も。
05-Photoshop : 自動ぼかし
カメラのピントのように、人物の奥にある背景を自動的にぼかすことができます。
〈ニューラルフィルター〉から〈深度ぼかし〉を選択すると、焦点距離やぼかしの強さなども調整することが可能です。
06-Photoshop : ゆがみフィルター、顔認識
従来のAIでも、簡単に表情を笑顔にすることができていましたが、生成AIではより細かく、歯を出した笑顔を生成することができるなど、AIのレベルが格段に増していることが伺えます。
07-Illustrator : 画像トレース
最後は、Illustratorを用いた画像トレースに挑戦。
変更が効かないような上図の画像であっても、〈プロパティ〉から〈画像トレース〉を選択し、いくつかの手順を踏んでいくと、簡単に背景を透過しパス化を行うことができます。
「Fireflyで比較的想像通りの画像を生成した後、Illustratorを用いてパス化を行うという流れが、現時点では一番作りたいものが作れるし、扱いやすいデータにすることができる手法だと思う。」と語られました。
ハンズオンでは、「初めてAIツールを活用した」という参加者も多く、AI機能のレベルの高さに驚く声も。
ディーゼロの皆さまと参加者さまがコミュニケーションを取り合いながら、和気藹々とした雰囲気の中でワークが行われました。
おわりに
「”実務で使える”デザインワークでのAI活用術」と題して行われた、今回のイベント。mark MEIZANでは、今後もクリエイティブ産業の創出とコミュニティ形成の拠点施設として、今回のようなイベントやセミナーを行なってまいりたいと思います。
株式会社ディーゼロ
Web制作クリエイティブ集団として、福岡を拠点に活動。「共創と共想」をコンセプトに、事業はデザイン・企画・コンサルティングなどを総合的に担当。
強みは「ウェブアクセシビリティ対応の推進」。Webサイト構築の方法から設計・実装までを一貫して行い、アクセシビリティへの取り組みに力を入れているほか、制作会社に対しても運用サポートを行っています。
ディーゼロさまについては下記のWebサイトより詳しくご覧いただけます。