mark MEIZAN Conference “Mix” vol.1③上場企業所属エンジニアから学ぶ「技術組織のエンパワーメント」
2024年2月8日に、mark MEIZAN Conference “Mix” vol.1を開催しました。
本日3番目のセッションでは、BASE株式会社 上級執行役員SVP of Development 藤川 真一 氏、株式会社リリー 代表取締役CEO 野崎 弘幸 氏をゲストとして迎え、モデレーターを株式会社W・I・Z取締役CBO 永田 司氏が務めました。
藤川氏は、2007年に携帯向けTwitterクライアント「モバツイ」を個人で立ち上げ、譲渡をされた後、想創社を2012年11月6日に設立。そのイノベーションとリーダーシップでBASE株式会社の取締役CTOに就任しました。2019年7月には、同社上級執行役員SVP of DevelopmentおよびPAY株式会社の取締役に就任し、経験と洞察力によって業界の中心で活躍しています。また、慶應義塾大学大学院の研究員としての活動やG’s Academyのメンターとしての指導し、デジタルハリウッド大学大学院の客員教授を務めるなど、幅広い分野での貢献をされています。
野崎氏は、東京でのネットワーク管理や大学職員としてのシステム管理など、技術領域での豊富な経験を積んできました。2005年からは鹿児島のソフトウェア開発企業で、クラウド事業の立ち上げという大役を担い、プロダクトマネージャーとして革新的なサービス開発に携わりました。2017年には、自らが創業したリリーを通じて、独自のサービス開発に加えて、企業のDX取り組みを支援するなど、テクノロジーの最前線で活躍しています。また、mark MEIZANを運営する「薩摩郷中」というジョイントベンチャーの代表も務め、そのリーダーシップとビジョンが注目されています。
本セッションでは、「組織を作ること自体がエンジニアリング」という観点から、エンジニアが働きやすい環境の構築やエンジニア組織の形成について、貴重なご意見をいただきました。
左から藤川 真一 氏、野崎 弘幸 氏、永田 司氏
採用について
藤川氏にBASE株式会社にて取締役CTOを担われていた際の役割をお聞きすると、「「採用」は、CTOにとって重要な役割の一つだった。」と強調しました。
「組織の発展を考える上で、採用と働く環境の整備が不可欠である。」と述べ、自身がBASEに参加した際には「みんなが働きやすい環境を作る責任を担う。」と宣言したことを明かしました。
さらに、採用について「基本的にはエンジニアが自ら積極的にスカウトを行わなければ、優秀な人材は得られない。」と語りました。東京には多くのエンジニアが存在すると思われがちですが、競争が激しく、求人を出すだけでは十分ではないことを指摘しました。そのため、転職エージェントに依頼することも一つの選択肢であると述べつつも、「優秀な人材は自ら積極的に探しに行くべき。」と強調し、マネージャーであれば全員が採用活動に従事していると話されました。
組織改革について
マネジメント管理
BASEは約300人が勤務し、そのうち3割がエンジニアです。藤川氏はマネジメントの必要性を強調し、「社員との接触時間を確保するためには、機械的なマネージャーを立てて組織改革を進める必要がある。」と話されました。
その理由について藤川氏は、「マネジメントでは現在1on1がマストになっている。1週間に一度30名と面談をするとなると、自分の時間も限られ、部下に時間を割くことができない。社員との時間をしっかり確保するためには、部下がさらに部下を持ちマネジメントシステムを採用することが不可欠だ。」と話され、マネージャーが直接メンバーと向き合い、状況を把握することの重要性を強調されました。
一方、株式会社リリーは約25人が勤務し、7割がエンジニアである。現在CTOが不在であるため、文化の構築や採用方針などは全て率先して野崎氏が行なっている。野崎氏はリリーの組織について「マネジメントをしなくても、エンジニア同士の尊敬がチームの結束を形成している。」と組織のコミュニケーションが取れていると話されました。しかし、事業拡大を考えると従業員も増えてくるとこから、「今後の規模拡大では、各部署にマネジメントを担う将軍のような存在が必要になる。組織を大きくするためにはマネジメントが必要。」と述べられました。
マネジメント管理についての議論では、管理が悪い意味を持つものではなく、むしろ社員が自らの意欲を伸ばし、適切な方向へ導く役割が重要であるとの認識が共有されました。
マネージャーの在り方については、「テックリードである必要はなく、むしろ全員の心情を理解し、代弁し、トップの意図を的確に伝えることが重要。」と述べられました。
加えて「エンジニアの上司はエンジニアであるべきであり、そうでなければ意思疎通が難しくなる。エンジニアが最良のパフォーマンスを発揮できる環境を整えるには、適切な人材を適切な役割に配置することが不可欠だ。」と強調されました。
さらに、野崎氏も、「尊敬される技術とマネジメント能力を兼ね備えたマネージャーが必要。」と述べ、組織の成長には適切なマネジメントとチームの結束・尊敬が欠かせないことが話されました。
評価制度の平準化
藤川氏は、「当時の給与テーブルから評価基準を作成した。成功したと思っているのは、エンジニアの中でも市場価格が変わってくるのでレンジの差はありましたが、評価基準を明確にしたことで摩擦が起きなかったこと。」と話されました。
野崎氏は、「現在は評価制度は存在しない。エンジニアやクリエイターは、技術が明確であり、自己の能力と他者の能力を認めあうことで成り立っている。」と述べられました。しかしながら、会社の規模を拡大する過程で、50人、100人という規模に至る上で、評価制度などの導入が必要になることも述べられていました。
最後に
今回のセッションでは、組織を構築すること自体がエンジニアリングであること、エンジニアが最大限に活躍し、成長できる環境を整備することが、企業の規模拡大に直結するとの意見が共有され、働きやすい組織を形成するための取り組みや事例について、貴重な情報が共有される場となりました。
ご登壇いただいた藤川氏、野崎氏、永田氏、そして参加者の皆様、心より感謝申し上げます。
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