2024.9.20 Fri

“Spread Pt.3” 最終審査会

2024年9月8日、mark MEIZANにて”Spread Pt.3”最終審査会が開催されました。約1ヶ月に及ぶプログラムの最終回となる最終審査会には13組の参加者と、20名を超える観覧者のみなさまにお越しいただきました。

スタートアップ創出・新規事業創出を目指す“Spread”とは?

Spreadは、2022年度から開始した「インキュベーション型ビジネスプランコンテスト」です。
専門家によるメンタリング・複数回にわたるフィードバック・ビジネスプランコンテスト等を行い、新規事業創出に必要な知識や考え方を学ぶプログラムとなっています。
3回目の開催となるSpread Pt.3は「新規事業を創出する力を育むこと」を目標に掲げ、8月10日よりスタートしました。これまでのSpreadと大きく変わったのは、担当メンターを設定し、より充実した伴走支援型になったこと。各人、各チームの担当メンターが参加者のビジネスアイデアをミーティングを重ねながら個別にブラッシュアップし、最終日にあたる9月8日のプレゼンテーションに向けて共に磨き上げてきました。

今回メンターを務めたのは、次の方々です。

株式会社チェンジ鹿児島 代表取締役 中垣 雄 氏
East Ventures フェロー 大柴 貴紀 氏
株式会社W・I・Z 代表取締役 松岡 宏満 氏
鹿児島銀行 地域支援部の方々

身の回りの小さな困りごとやアイデアをビジネスプランに!

初日となる8月10日には、すでにアイデアを持っている参加者やゼロからのスタートとなる参加者など様々。自身の抱える身近な困りごとやアイデアをもとに、1ヶ月間メンタリングを行いながらブラッシュアップを重ね、ビジネスプランへと進化させてきました。
ビジネスプランの組み立て方から、プレゼンテーションの魅せ方まで、メンターはもちろん参加者同士で切磋琢磨しながら、回を重ねるごとに磨き上がる発表に期待が高まります。

急速に変化する現代社会で創出する力を養う必要性

開会の挨拶として、鹿児島市 産業局 産業振興部 産業創出課 安永 めぐみ課長が登壇。 「今通用しているビジネスが明日通用するかわからない世界。新しい、それまでにないビジネスを創出する力は必要。今回参加することで様々な場所で活きる経験をできたのではないか。」と急速に変化する現代社会において、本プログラムを開催する意義を語りました。



また、審査員は、次の方々が務めました。

写真前列右から
株式会社現場サポート 代表取締役社長 福留進一 氏
鹿児島銀行 執行役員地域支援部長 小笹康浩 氏
ベータ・ベンチャーキャピタル株式会社 ファンドマネージャー 津野省吾 氏
鹿児島市 産業局長 新小田 洋子 氏
株式会社リリー 代表取締役CEO 野崎 弘幸 氏

そして迎えた最終審査会では、13組の参加者がそれぞれのビジネスプランをプレゼンテーション。優れた発表の数々に思わず聞き入りながらも、厳正なる選考の結果、以下の5名が受賞されました。

【ソーシャルグッド賞】 精神障がい者の一歩をサポートするフィクスタ 山下 昭人 氏

社会的価値の高さを評価するソーシャルグッド賞に選ばれた山下氏は、自身の経験をもとに精神障がい者をサポートするビジネスプランを提案されました。

提供するサービス内容として、「オンライン自助グループ」「専門家との相談」の2点をあげ、オンラインで自助グループを形成することにより、精神障害に悩む人同士で相談し合える仕組みを作り、ひとりで抱え込む人を減らす効果があると述べました。

そして、「専門家との相談」にフォーカスし、精神科医やNPO法人と対話できる窓口を用意し、相談の場を設けるビジネスプランを発表しました。山下氏は、「専門家の指示に従うことが本サービスのテーマである『課題の解決』の1番の近道」と語り、専門家へのアクセスを簡単にし、解決に向けて動くことの重要性を熱く語りました。
山下氏は、「アプリ内でのサービスだけでは限界がある」と語ります。サービス展開の三年目の目標として、精神科や心療内科と提携し、ユーザーと病院を直接繋ぐサービスを実現することを掲げました。病院への訪問を誘導し、医師の診察や薬の処方など、より直接的な治療方法につなげることを狙いとしています。
自身の経験を交えながら、医療機関やNPO法人と精神障がい者を繋ぐようなプランを発表してくださいました。

審査員の福留氏は「当事者はもちろんだが、周りも困っている。企業をターゲットにすることで、当事者のみならず周囲の人々にも相談の機会を与えることができるのではないか。」とさらなる視点を語りました。さらに、野崎氏は「社会の問題を解決して、より豊かにしていくことは起業の大きな意義である」と語りました。

ソーシャルグッド賞を受賞した山下氏は、「他の参加者の完成度がすごく高かったのでまさか賞を頂けるとは思っておらず、とても嬉しいです。僕は将来起業してみたいとは思っていましたが、その想いは今回のイベントを経てより強固なものとなりました。この経験は、僕の人生においてとても重要なターニングポイントになったと思います。」と語られました。

【アイデア賞】 地元の未利用資源を活用した商品の販売計画 伊達 賀奈子 氏

鹿児島の生活に密接に関わる火山灰。「厄介者」として扱われる火山灰を資源として利用できないか?という切り口で伊達氏の発表がスタートしました。
この事業のきっかけは、「火山灰を使って鹿児島の魅力を伝える商品を作りたい」という伊達氏の想いと、「地域の未利用資源の特徴を活かしながら化学の力で価値ある新しいサステナブル素材にして提供していきたい」という企業が手をとったことに始まります。

実際に3Dプリンターで試作した酒器を見せながら、最終的には火山灰を50%以上含め、火山灰の赤外線反射率やガラス質などの特徴を活かしてセールスポイントにした商品開発ができればと語られました。
県内の伝統的な焼き物である白薩摩や黒薩摩のようにストーリー性あるものを目指しつつ、それよりは安価なくらいの価値ある設定で販売することを想定し、観光客などをターゲットに販売することで、地域の活性化と関係人口の増加への貢献を目指しています。


「厄介者に新たな価値を」とキャッチーなフレーズと共に締めくくられた発表は、桜島と共に暮らす私たちの価値観を変えるような力強さを持っていました。

審査員の福留氏は、「とても可能性のあるプレゼン。もう少し価格を上げてギフト用にするのはどうだろうか」と提案され、さらに、津野氏は、「優秀なアイデアを事業を落とし込んでプレゼンされていた。私も焼酎が大好きなので実際に使って飲んでみたい。」と製品に対する大きな期待を語られました。

アイデア賞を受賞した伊達氏は、「もともとアイデアはあったものの、これをどのようにブラッシュアップすれば良いか悩んでいた際にこのプログラムを知りました。メンターさんを始め、他の参加者の方にも自分のアイデアを聞いてもらうことで、様々な視点からの意見をもらい、また人前で話すことへの自信にも繋がりました。プログラム参加を通して、アイデアはもちろん自分自身の成長にも繋げることができました。可能性が広がった、自分にとってすごく良い経験になった一ヶ月でした。」と語られました。

【鹿児島銀行賞】 おとな放デイ ”支援事業所利用者向けのデイサービス” 濱田 結 氏


就労継続支援B型(障害や難病のある人が利用できるサービス)の利用者が身近にいるという濱田氏。

利用者の帰宅時間が15時前後のため保護者がフルタイムで働けない現状にフォーカスし、保護者を待てる場所があれば良いのでは?という視点から、支援事業所利用者向けのデイサービスを発表されました。


事業内容は、利用希望の多い就労継続支援B型に見守りスタッフを派遣し、支援事業所内で迎えを待てるようにする人材派遣と、地域活動支援センターなどの既存施設と連携し、保護者の迎えを待てるように紹介するという既存施設との連携をあげ、最終的に施設運営そのものを行うことを目標とされました。

審査員の小笹氏は、「利用者やその家族を救うことはもちろんだが、労働人口の減少が叫ばれる現代において、意欲ある人に働いてもらえる仕組みづくりに興味がある。さらにブラッシュアップすることでより良いビジネスになる予感がする」と語られました。

鹿児島銀行賞を受賞した濱田氏は、「今回このような賞を頂け、とても嬉しく思っています。メンターさんとのミーティングを重ねていくごとに、私の中にあったふわっとしたアイデアがどんどん明確になり、現実的なものになっていくことが、とても楽しく、普段の座学だけでは学べない学びがありました。他の参加者の方々のビジネスプランから、目の前の課題を解決することはもちろん、今あるサービスをさらにより良くしようと追い求めることも今後社会で必要なビジネスだと改めて感じました。
今回の経験を機に更にビジネスプランを検討し、行動に移せたらなと思います。ありがとうございました。」と語られました。

【優秀賞】 水産物流通DX デジタル情報で変える地魚の魅力 江幡 恵吾 氏

水産物流の目指したい姿として、産地から生産者や漁獲の状況などの情報がいち早く消費者に届き、消費者の顧客ニーズや声が産地市場に素早く届くサイクルを通じて地元の魚の魅力を最大化させ地域経済を活性させることをあげられました。

今日の水産物流通では紙伝票やFAXが使われ、情報がなかなか伝わらないという課題があります。水産業において、漁業者は魚の計量・手書き伝票作成を省力化したいと悩み、買受人は魚の水揚げ状況を早く知りたいと悩んでいます。それを解決するべく考えられたのが、魚の自動計量装置とオンライン取引です。

この技術の強みとして、漁港に水揚げされた瞬間に、画像を含めた魚情報をデジタル化し、競り価格をリアルタイムで知ることができることをあげられました。このサービスを活用することで、水産業に付加価値をつけ、「儲かる漁業」になってほしいと語られました。
鮮魚流通は時間との勝負。水産物流通DXを活用し、情報をいち早く提供することで商売の幅を広げてほしいと語ります。

審査員の新小田氏は、「漁業者から市場に関わる人、消費者など、いろんな人にプラスに働くプランだった。水産業の推進に一役買うのではないか。」と期待を語ってくださいました。

優秀賞を受賞した江幡氏は、「優秀賞をいただきまして誠に光栄に、そして大変うれしく思っております。 受賞できたのはメンターのみなさまのご指導、ご協力のおかげです。 心より感謝申し上げます。 ビジネスプラン策定、分かりやすいプレゼンテーション方法を一から勉強したいと思い、「Spread Pt.3」に参加させていただきました。 毎回、新しい発見と刺激があり、とても充実した時間でした。 この賞を励みにしながら、一日も早くビジネスモデルを実現できるように頑張っていきたいと考えています。」と語られました。

【最優秀賞】 小学生の放課後の移動手段を提供する コドモビ 中村 元 氏

最優秀賞を受賞した中村氏は、小学生だけで定期利用できる安全な移動手段を提供する交通サービス「コドモビ」を発表されました。
放課後の子供を取り巻く課題として、「学童問題」を取り上げました。学童保育の利用者数は右肩あがりで、待機児童数は横ばい。しかし、鹿児島市も全国も、利用者枠に空きがあるというのです。
なぜ、空きがあるのに待機児童がいるのでしょうか?
中村氏は、枠が足りていないのではなく、空きはあるにも関わらず、移動手段がないために学童保育を利用できない子供がいると語りました。
さらに、「習い事問題」に注目し、「送迎ができないため習い事を諦めた」という声を取り上げました。
中村氏はここで、視点移し、タクシー事業の現状について語ります。子供の移動の需要時間帯である14:00~16:00は、タクシー事業の閑散時間にあたるそうです。

「コドモビ」は、この2時間タクシーをチャーターし、学校を基点に学童や習い事へ子供達を送り届けることができると述べ、他の交通手段に比べ、安全性・利便性と料金のバランスが取れた交通手段だと語りました。


審査員の福留氏は「子供、家族、タクシー業界、関係者みんなが幸せになるようなプランである。鹿児島を、日本を変えてくれるような事業家になれるのでは」と称えました。

最優秀賞を受賞した中村氏は、「まずは、このような機会を与えてくださったmark MEIZANの皆様に感謝申し上げます。またお忙しいところ何度もメンタリングをしてくださった飯森さんはじめ鹿児島銀行チームの皆様にも感謝の気持ちを伝えたいです。 今回は、自分が日ごろ感じていた”不便”に着目してビジネスアイデアを考えました。子どもやその親を取り巻く環境は、目まぐるしく変わっています。そして、まだまだ社会に歪みがある状態です。そこを少しずつ解消していくことが将来の鹿児島や日本のためにもなると思っています。まずはスモールスタートかもしれませんが、少しでも不便が解消して喜んでもらえる方がいることを信じて、実現に向けて活動していきます。 最後になりますが、鹿児島にこのようなチャレンジできる場があることはとても有意義なことだと感じました。老若男女誰でも新しいことにチャレンジできるということは鹿児島の魅力につながると思うので、そういう雰囲気を醸成していければいいなと思います。 ありがとうございました。」と語られました。

可能性を広げる一歩に マークメイザンでお待ちしています!

最後に、閉会の挨拶としてメンターを務めた株式会社チェンジ鹿児島の中垣氏が「プランはいろんな人の目に見てもらうことで新たな視点を得て、ブラッシュアップされていく。メンタリングの効果を実感できた一ヶ月だったのではないか。」と語られました。

審査員の方々、ご登壇された方々、参加いただき誠にありがとうございました。

今回は高校生から社会人の方まで、幅広い年代の皆様に参加していただき、メンターの方々と共に怒涛の1ヶ月を駆け抜けられました。自身のアイデアを誰かに見てもらうことで、プランはどんどん進化していきます!
自分のアイデアを具現化したい時、何かしたい!という気持ちを抱えながらもどう行動に移して良いかわからない時、誰かに話をすることで道が切り開けるかもしれません。
相談することは、可能性を広げる第一歩。マークメイザンは、夢を追いかけチャレンジするみなさんをサポートすべく、体制を整えてお待ちしております。今回フォーカスした起業家だけでなく、エンジニア、クリエイターのスペシャリストにも相談できる窓口があります!今回参加された登壇者のみなさんのように、自身の夢を形にしてみませんか?

自身を飛躍させる新たな一歩として、ぜひ、マークメイザンにお越しください!

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