鹿児島から世界へ:中小企業のための海外展開リアル戦略セミナー&交流会~農業・食品ビジネスの海外展開と現地での挑戦を学ぶ~

人口減少や国内市場の縮小が進むなか、海外市場への展開は中小企業にとって重要な選択肢の一つとなっています。一方で、「何から始めればよいかわからない」「自社の商品は海外でも通用するのか」といった不安を抱える企業も少なくありません。

2026年6月26日、mark MEIZANでは「鹿児島から世界へ:中小企業のための海外展開リアル戦略セミナー&交流会〜農業・食品ビジネスの海外展開と現地での挑戦を学ぶ〜」を開催しました。食品産業に携わる方をはじめ、様々な業種の方や自治体職員、学生など、多様な立場から約40名もの方にご参加いただきました。 一次産業が盛んな鹿児島ならではのテーマということもあり、業種や所属を超えて多くの方が関心を寄せるイベントとなりました。

基調講演:開発途上国における農産物流通の近代化への期待と課題

基調講演では、鹿児島大学農学部農学科の豊 智行教授にご登壇いただきました。

講演では、開発途上国で見られる農産物流通の課題として、生産地では農産物が余り価格が下がる一方、消費地では十分な供給が届かず価格が高騰する「一物多価」の問題について解説されました。本来であれば同じ農産物は地域が異なっても大きな価格差が生じないことが望ましいものの、流通網や市場機能が十分に整備されていない地域では、このような価格差が生まれてしまいます。講演では、1990年代のベトナムを例に、農産物を自転車で運搬する様子や自然発生的な市場の写真も紹介され、開発途上国における流通の課題をより具体的にイメージできる内容となりました。

こうした状況を改善するためには、道路や物流網といった社会インフラの整備に加え、市況情報の共有や流通事業者の育成、品質を維持したまま輸送できるコールドチェーンの構築など、流通機能そのものを高度化する仕組みづくりが必要だといいます。

さらに、世界各国の人口動態やGDP成長率などのデータをもとに、今後市場拡大が期待される地域についても紹介されました。

質疑応答では、「一物一価の達成に向けて日本企業にはどのような参入の余地があるのか」といった質問が寄せられました。豊教授は、日本を含む現在の先進国も、かつては同様の課題を抱え、それを乗り越えてきた経験があると説明。日本が培ってきた流通や品質管理のノウハウに加え、現地の人々と協働しながら仕組みづくりを進めることで、開発途上国が抱える課題の解決につながるとの考えを示しました。

海外展開は商品を輸出するだけではありません。日本が培ってきた技術や仕組み、そして課題を克服してきた経験そのものが、新たな価値となり得ることを改めて実感する講演となりました。

パネルディスカッション:海外展開のあれこれ

続いて行われたパネルディスカッションでは、「海外展開のあれこれ」をテーマに、JICA九州企業連携課主任調査役 畑中尚実 氏をモデレーターに迎え、海外市場への挑戦を続ける県内企業3社にご登壇いただきました。

海外ビジネスを進める中での成功のポイントや失敗談、現地パートナーとの出会い方など、それぞれの実体験を交えながら率直な意見が交わされました。

有限会社かごしま有機生産組合 EC事業部兼海外事業部 部長の福元飛勇真氏は、海外展開を進めるうえで、組織全体が挑戦に前向きであったことが大きな支えになったと振り返ります。海外展開への理解が組織内にあったことで意思決定がスピーディーに行われ、事業をテンポよく進めることができたといいます。一方で、海外展開を始めた当初は、業務に加えて現地とのやり取りや関係づくりにも多くの時間を費やし、非常にハードな日々が続いたそうです。海外では日本の働き方改革の考え方がそのまま通用するわけではなく、こうした働き方の違いも課題の一つとして率直に語られました。

株式会社コラソン 代表取締役の宮田瑠星氏からは、人とのつながりの重要性について語られました。事業を進めるうえでの関係者だけでなく、商品を実際に手に取る顧客と顔を合わせ、その声に真摯に耳を傾けることが大切だといいます。「こちらの価値観を押し付けても人は動かない」という言葉が印象的でした。

また、信頼関係を築くうえで、その土地の言葉でコミュニケーションがとれることは強みになったと語ります。現地パートナー探しについては、「街中にチャンスがあふれている」との考えのもと、仕事シーンだけでなく、日常生活のなかで出会う人とのつながりも大切にしているとのこと。何気ない会話や交流が、新たなビジネスにつながることも少なくないと、その経験を紹介しました。

ファーマーズサポート株式会社 代表取締役の春日良一氏からは、支援機関を活用しながら海外展開を模索してきた経験が語られました。九州経済産業局による「J-Startup Kyushu」への選定をきっかけに海外展開への挑戦が始まり、韓国で開催されたスタートアップイベントへの参加や、JETROソウルによる現地でのマッチング支援を通じて、実証実験までつなげることができたといいます。さらに、スタートアップ仲間とのネットワークから通訳ができる人材と出会うなど、人とのつながりが新たな挑戦を後押ししたエピソードも紹介されました。一方で、類似サービスを展開する会社が現れるという苦い経験にも触れ、その中でも周囲の力を借りながら着実に歩みを進めてきたことが語られました。

パネルディスカッションを通して共通していたのは、海外展開では販路開拓や制度の違い、文化・商習慣の違いなど、国内とは異なる多くの壁に直面する一方で、それらを乗り越える原動力となるのは「人とのつながり」であるということでした。組織の理解、現地との信頼関係、そして支援機関や仲間とのネットワーク。それぞれ異なる立場から語られた経験は、海外展開に近道はないものの、一歩ずつ挑戦を積み重ねることの大切さを物語っていました。

最後には、これから海外展開を目指す方々へのメッセージが送られました。同じ鹿児島を拠点に世界へ挑戦してきた3社から語られる言葉の数々は、参加者にとって海外市場への挑戦をより身近に感じる機会となったのではないでしょうか。

支援制度とネットワークで挑戦を前へ

セミナー後半では、JICA九州、鹿児島市産業政策課、JETRO鹿児島から、それぞれが実施している海外展開支援について紹介されました。海外展開は企業だけで進めるものではなく、支援機関を積極的に活用しながら取り組めることが伝えられ、参加者にとって具体的な一歩をイメージできる時間となりました。

セミナー終了後には交流会も開催され、登壇者と参加者が自由に交流する時間が設けられました。海外展開を目指す人、支援する人、すでに挑戦している人が立場を超えて意見を交わし、講演やパネルディスカッションでは聞ききれなかった疑問や経験談について、活発な情報交換が行われました。イベント終了後、参加者からは「大変勉強になり、良い出会いもありました」といった感想が寄せられ、今後の挑戦につながる実りある時間となりました。

mark MEIZANから、世界へつながる一歩を!

今回のセミナーでは、大学教授による学術的な視点と、実際に海外へ挑戦している企業によるリアルな経験が共有されました。人口減少が進む日本において、海外市場への挑戦は地域企業にとって重要な選択肢の一つとなっています。本セミナーは、鹿児島の農業・食品・地域資源が世界へ羽ばたく可能性を改めて感じられる機会となり、多くの参加者にとって新たな一歩を踏み出すきっかけとなったのではないでしょうか。

mark MEIZANでは今後も、起業や新規事業のヒントを得られる様々なイベントを開催し、鹿児島から新たな価値の創出に挑戦する皆さまを後押ししてまいります。また、起業や経営、新規事業をはじめ、クリエイティブやエンジニアリングに関して、各分野で経験豊富なスペシャリストによる相談対応も行っております。ぜひお気軽にご利用ください!