2023.10.11 Wed

アカウンティングの基礎 〜新規事業開発のためのアカウンティング・ファイナンス勉強会 【第5回】〜が開催されました。

2023年8月2日に『アカウンティングの基礎 〜新規事業開発のためのアカウンティング・ファイナンス勉強会〜』の第5回を開催しました。前回に引き続き、講師にBuddycare株式会社の代表取締役CEO 原田 和寿氏をお迎えしました。

第4回に続き、今回もフェルミ推定からスタートしました。お題は、”ガソリンスタンド”。

参加者は、ガソリンスタンド運営会社の経営企画部長という立場から「会社の利益を上げるための市場調査を開始した」という設定のもと、”日本にガソリンスタンドが何ヶ所あるか”について推定します。

今回の目的は、立場や状況によってどのような発想ができるのかということ。”仮説がどこにあるのか”、”どのような戦略を打ち出せるのか”などはそれぞれの立場や状況によって異なるため、どのような思考でその数値に至ったのかというプロセスに重点を置いて考えました。

ここから本題のファイナンス概要へ入ります。

ファイナンスの概要について

最初に原田氏は、「今回はファイナンスのスキルを身につけることが目的ではない。」と述べます。続けて、「ファイナンスは、将来の目的や目標を定めそれを現在まで割り戻していくと現在何をしなければならないのか分かるという思考方法のことだといえる。今回は、この思考方法自体を身につけてほしい。」と語られました。

また、「投資をすると金利などがついてきてどんどん大きくなる。例えば、”勉強する”ことも投資の一つで、早く始めた方が最終的な利益は多くなるといえる。早く始めることの時間的価値を認識することも(ファイナンスを理解するうえで)重要な要素の一つ。」と語られました。

今回の主な目的は、会社の価値を計算できるようになること。事業計画を立てそれらに基づいて株式価値を計算したのち、買収価格を算出します。今回はこのプロセスに焦点を当てていきます。

まず原田氏は、ファイナンスにおける最重要の基本は、”預金をしたら金利が付く”ことだと述べ、「お金を預ける、つまり預金に投資すればその分リターンがある。複利で入ってくるということがポイントで、これを頭に入れておく必要がある。」と語られました。

DCF(ディスカウントキャッシュフロー)とは

ファイナンスの基本を理解したうえで、現在価値の考え方としてDCF(ディスカウントキャッシュフロー)の解説に入ります。

そもそもDCFとは、キャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を算出する方法のこと。また、”割り引く”とは、第1期から、2年、3年と過ぎていく中で、それぞれの年におけるキャッシュフローが現在から見てどのくらい価値があるかを計算する際に登場します。

原田氏は「第1期、第2期…とそれぞれ現在価値を割り引いて算出された数値を足すことで、現在の事業価値を算出することができる。」と述べられました。

ファイナンス概要の解説が続きましたが、以降は参加者とのコミュニケーションも交えつつ、ファイナンスの核論に迫ります。

将来価値と現在価値

まずは将来価値について。原田氏は「例えば、100万円を投資したとき1年後に何円になるか。これが将来価値であり、預金に金利が付くというシンプルな仕組みのことを指す。」といいます。加えて、金利の種類や複利の計算についても理解を深めました。

一方、現在価値とは、将来もらえる額が現在ではどのくらいの価値であるかを算出する考え方のこと。例えば、今の100万円と5年後の100万円の価値、どちらが大きいかを考えたとき、ファイナンス的な視点でいえば今の100万円のほうが価値が大きいと考えられます。

将来価値と現在価値、両者の関係性については原田氏から図を用いて解説がありました。

割引率とは

続いて、割引率の解説に入ります。

先程も「割り引く」という単語が登場していたように、割引率とは将来の価値を現在の価値に直すために用いる割合、つまり、投資に対する期待収益率のことをいいます。

原田氏からは「さまざまな言葉が登場してきたが、預金などの投資に対するリターンを金利と呼ぶように、事業に対する投資の場合には割引率という言葉を使っていく。」と語られました。

また、”「5年後の100万円」の現在価値”を例に挙げ、縦軸を現在価値、横軸を割引率としたグラフを参考にしながら、割引率が大きくなればなるほど、現在価値は小さくなることを学びました。

実際に数値を用いながら現在価値や事業価値の算出を行い、参加者も頭を捻らせながらファイナンスの実践的な活用方法について理解を深めました。

永久債と資産の価格について

これまでの解説を踏まえ、永久債についての解説へ。

永久債とは、元本の償還はないものの、毎年一定額の利子を払い続ける債権のこと。事業に当てはめて考えると、毎年一定のキャッシュフローが入ってくることだといいます。

数年間で完結する事業とは異なり、無期限で事業を継続する事が前提となるため、数十年、数百年後まで事業計画を作成するとなると際限がありません。その場合、ある年以降は一定のキャッシュが入ってくるとみなして計算することができます。この継続的に入ってくるキャッシュフロー合計の価値を、「継続価値」や「ターミナルバリュー」などと呼びます。

また、資産の価値についても解説がありました。

原田氏は、「ある資産の価値は、その資産が将来生み出すキャッシュフローの現在価値の合計に等しい。」といいます。加えて、どのような場合に投資をすべきかという”投資判断”や資金回収期間に関しても言及がありました。

最後に原田氏からは、「結局、全ての計算の元になっているのは事業計画。そのため、”事業計画を正確に見積もること”が大切になってくる。結果としての事業価値ではなく、事業計画の前提条件に突っ込みを入れることが重要。」と語られました。

終わりに

今回は、事業計画を立て、買収価格を決定するまでの一連の流れにおいて、「事業価値の算出」や「投資額の決定」についての解説が行われました。次回の『アカウンティングの基礎 ~新規事業開発のためのアカウンティング・ファイナンス勉強会~』は、ファイナンスについてより理解を深めていきます。

mark MEIZANでは今後もスタートアップ、起業を志す方、または新規事業に携わる皆様が、互いに学び、成長し、共にコミュニティを形成する場となることを目指して今回のような勉強会を開催してまいります。

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