“Spread Pt.4” 最終審査会
2025年9月13日、mark MEIZANにて”Spread Pt.4”最終審査会が開催されました。

今年も始動っ!“Spread Pt.4”
2022年度に始動した同名プロジェクトの理念を受け継ぐ、インキュベーション型のビジネスプランコンテストも今回で4回目を迎えました。
開催期間中、専門家によるメンタリングや複数回にわたるフィードバック、ビジネスプランコンテスト等を通じて、新規事業創出に必要な知識や思考法を体系的に学べるプログラムです。
第4回となる今回の「Spread Pt.4」は、「鹿児島から起業が起こる土壌や新規事業を創出する力を育むこと」を目的に開催されました。
参加者の皆さんは、担当メンターとの継続的なミーティングを通じてビジネスアイデアをブラッシュアップし、最終審査会に向けて共に磨き上げてきました。
今回メンターを務めたのは、以下の方々です。
East Ventures フェロー 大柴 貴紀 氏
株式会社W・I・Z 代表取締役 松岡 宏満 氏
鹿児島銀行 地域支援部の方々
メンターと歩む一か月。アイデアをビジネスプランへ!
今年度は本イベントに先立ち、プレイベントを開催しました。Spreadの概要説明に加え、アイデア具現化をテーマとしたワークショップも実施。
まだ具体的なアイデアを持っていなくても、「身近な課題をビジネスで解決したい」という思いを抱く多くの方々にご参加いただきました。
8月9日にスタートした本イベントには、高校生・大学生から社会人まで、幅広い年代の参加者が集まりました。中にはプレイベントをきっかけに本イベントへとつながった方も。
初回時点ではアイデアがなかった方も、メンタリングや全体でのプレゼン発表を重ねて成長する姿を見せてくれました。準備していたプランを一新する参加者も現れる等、刺激ある期間を過ごしながらそれぞれのビジネスプランを磨き上げていきました。
回を重ねるごとに、最終審査会への熱意と期待が高まっていく様子が印象的でした。

未来の起業家を、ここから

9月13日、最終審査会当日。参加者の緊張感が漂う中、鹿児島市 産業局 産業振興部 産業創出課 前田課長より開会の挨拶があり、「このSpreadが、参加された皆さんにとって次なる挑戦への一歩となり、未来の起業家がここから羽ばたいていっていただけることを心から期待している」とエールが送られました。
今回審査員を務めていただいたのは次の方々です。

写真左から
株式会社現場サポート 代表取締役会長 福留 進一 氏(審査委員長)
株式会社MTG Venture 代表パートナー 伊藤 仁成 氏
鹿児島市 産業局長 濵﨑 誠二 氏
ベータ・ベンチャーキャピタル株式会社 ファンドマネージャー 津野 省吾 氏
株式会社iiba 代表取締役 逢澤 奈菜氏
そしていよいよ、19組の参加者によるビジネスプランのプレゼンテーションです。発表順が示され、参加者の皆さんにざわめきが広がり、緊張感が高まります。それぞれの参加者が自身の体験や身近なところから社会の課題を見つけ、解決したい思いや描きたい未来を、プレゼンを通して伝えてくださいました。厳正なる審査の結果、今回は以下の5名が受賞されました。
【ソーシャルグッド賞】茶殻を有効活用したバスボム 西山 詠斗 氏・新川 貴大 氏・藺牟田 礼雄 氏
社会的に価値の高いアイデアを表彰する「ソーシャルグッド賞」を受賞したのは、西山氏らのチーム。日本では茶葉の消費量に対して99%以上の茶殻が廃棄されている現状に着目しました。そこで考案されたのが、荒茶の生産量日本一を誇る鹿児島茶の茶殻を美容バスボムに再生し、鹿児島茶の認知度向上と茶農家の収益増加を同時に実現する循環型ビジネスです。
環境への優しさや、カテキンが持つ美容・健康効果を強みに、主婦層やSDGsへの関心が高い層をターゲットに展開。贈答用の需要に加え、海外への緑茶輸出の増加や、外国人のサステナビリティ志向の高さを背景に、海外展開への期待も語られました。SNS活用や県内での有名ホテル・温泉での販売等マーケティング戦略が示されました。
最後には、試作品を水に溶かして見せる実演もあり「将来的には茶葉型のバスボムにしたい」と夢を膨らませました。

「私たちが目指すのは、捨てられるはずだった茶殻に新たな価値を与え、美しく持続可能な社会を創造すること」という言葉で締めくくられたプレゼンは、鹿児島と社会全体の明るい未来への願いが伝わるものでした。
審査員の津野氏は「鹿児島ならではのビジネス」と評価したうえで、「アップサイクル製品として作る付加価値次第で、茶殻を仕入れられるかどうかという課題もあるのでは。お茶農家さんにヒアリングすることで商品開発におけるヒントがもらえるのではないか」と助言。また、逢澤氏からは「バスボムの制作体験も含めて、地域に触れてもらう、知ってもらうきっかけも作れると思う」と事業の可能性が語られました。
<受賞者コメント>
この1ヶ月を通して、ビジネスプランを考えることの楽しさや難しさなど多くの学びを得ることができました。メンターの方々のアドバイスや他の参加者の皆様のアイデアから刺激をもらい、最後の発表では楽しくチームのみんなで伝えたいことを自分たちなりに表現することができたので良かったです。この経験を活かして、学校生活や今後の社会人生活でも様々なことにチャレンジしていきたいと思います。(西山氏)

【アイデア賞】 サブカルカレンダー 中岡 小虎 氏・小田原 星央 氏
世の中を変革できるようなアイデアを表彰するアイデア賞に選ばれたのは、アニメや漫画などの情報が自動で集約され、推し活の手助けをしてくれるカレンダーアプリ「サブカルカレンダー」。好きなアニメや漫画に関する情報を集めようとしても、フェイクや偽通販が多い、作品数が多く情報が分散している、といった実体験での困りごとから生まれたアイデアです。
イベントや放送日などの色分け表示、情報元・配信元のサイトへのスムーズなアクセス、好きな作品とコンテンツを組み合わせたお気に入り登録、といった機能が揃えられています。
好きなコンテンツに関する情報が更新されると即時通知される仕組みや、一万作品以上の情報を集約できることなどが強みとして挙げられました。RPAという技術を用いることで、24時間365日稼働して多くの作品に関する膨大な情報を収集することが可能になると語ります。

「オタクを応援したい!」という気持ちと発表者自らの希望が乗った、実感のこもった楽しいプレゼンでした。
審査員の濵崎産業局長は「分かりやすくかつ楽しいプレゼンテーション」とコメント。さらに伊藤氏は「サービスを利用するだけでなく、オープンソースのように書き込めるようにして、ユーザーさんが一緒に成長させるようなサービスが作れると優位性ができておもしろいのでは」とサービスのさらなる発展の可能性を提案しました。
<受賞者コメント>
このたびアイデア賞という素晴らしい栄誉をいただき、心から感謝しています。僕たちの想いが審査員の皆さまに届いたことは、大きな励みとなり、これからの挑戦に向けて大きな自信を与えてくれました。この喜びを胸に、アイデアを実現し、多くの人の心に響く形にできるよう、これからも全力で取り組んでまいります!(中岡氏)
起業のアイデアを出すところからスタートしてはじめは抽象的でしたが時間をかけてどんどん明確なものになっていくところにとても魅了されました。またそのアイデアが認められるのはうれしかったです。学生ながらもメンターの方のお陰でとても楽しく活動することができ、いい経験になりました。(小田原氏)

【鹿児島銀行賞】つなスタ 植山 夏帆 氏
鹿児島の発展に貢献するようなアイデアを表彰する鹿児島銀行賞。植山氏は、地元企業が学生に直接アプローチできる機会を提供するプラットフォーム「つなスタ」を提案されました。この事業は、「企業認知を広めたい」「働き手不足だがPR方法が分からない」といった悩みを抱える地元企業を助けたいという思いからスタートしたと言います。8月にはプレオープンもしたそうです。

つなスタは学生に対しては自習場所として、企業に対しては学生に直接アプローチできる場所として提供します。
企業に対しては二つのプランを提供します。一つは、イベント告知や人材募集、学生のニーズ調査などの中から、好きなオプションを必要な時だけ契約できるライトプラン。もう一つは、長期間で継続的にPRしたい企業向けのプレミアムプラン。デジタルサイネージ広告、会社パンフレットやロゴの設置、ライトプランのすべてのオプションなどを原則セット販売とし、三か月契約で提供します。これらの二つのプランで企業が抱える悩みを解決でき、そのうえ従来の方法に比べて大幅にコストカットできると言います。
「自習室で地元の魅力を発信することで、学生が地元に興味を持つきっかけを作り、地域創生を目指します」と力強く語られ、プレゼンは締めくくられました。
審査員の伊藤氏は、「学生からすると勉強の場は実は足りない。こういったサービスがあるとすごく使う人が多いのでは」と期待を示しました。また逢澤氏からは「圧倒的にプレゼンが上手で本当に引き込まれた」との言葉があり、プレゼンの完成度の高さも評価されました。
<受賞者コメント>
一年前から大切に育ててきたアイデアなので、鹿児島銀行賞をいただき、本当に嬉しいです。審査の前にたくさんの方から意見をいただく機会があったため、自分のアイデアをより客観的に磨きあげることができました。いただいた賞で、さらにつなスタを盛り上げていきます。

【優秀賞】 飲食店向け来客予想AIサービス 下大迫 龍空 氏・渡邊 貴心 氏
サービス開発のきっかけは、鹿児島市内の飲食店から「来客数が前もってわかれば」という声を聞いたことでした。今年上半期の飲食店倒産件数は過去最多を記録しています。飲食店が抱える課題は、コロナ禍からの回復途中にある中での食材費や人件費といった運営コストの増加、人手不足、勘頼みの来客予想など様々。

これらの課題を解決するために考えられたソリューションは次のとおりです。まず売上データや来客人数のデータを収集し、そのデータと天気予報情報を独自のAIに学習させます。そうして得られた一週間の予想結果を経営者にLINEで自動送信するという仕組みです。このサービスを導入することにより、仕入れロスの削減、人員配置の最適化などが実現できると語ります。
実際に導入した飲食店からも好反応をいただいたようで、「低コストで使いやすい」と実用性の高さをアピール。将来的には鹿児島のみならず全国への事業展開を視野に入れているとし、「小規模飲食店の経営効率を高めることで人件費や食材費を削減し、持続可能な店舗運営を目指す」とビジョンを語りました。
審査員の濵崎産業局長は「新しい視点ですごく今後の鹿児島が期待できる」とコメント。また、津野氏は「コスト削減だけでなく、その先の売上を上げていくところにプロダクトを繋げていくところが大事。ぜひそのあたりについても考えて事業を実現させていただければ」と助言されました。
<受賞者コメント>
2人で参加して最優秀賞をとりたかった気持ちもありましたが、初めてビジネスコンテストに出て優秀賞という結果を貰えたことはとても嬉しかったです!今回審査員の方やメンターの方達から言われたことを改善していってまた実績を積み、将来的に起業をして行きたいなと思いました。(下大迫氏)

【最優秀賞】 ノミヤゲ 垣内 翔太 氏・吉満 駿太郎 氏
最優秀賞に選ばれたビジネスプランは、観光客がお酒と出会ったその瞬間にお酒を購入できるサービス「ノミヤゲ」。きっかけは、旅行会社として団体の添乗に行ったときのこと。飲食店でお客さんが気に入ったお酒のボトルを購入したいと思っても、飲食店は酒販免許を持っていないため購入できない現状があり、「観光の体験価値が下がっている」と感じた体験から、このサービスを考えたそうです。

飲食店がボトルを販売するためには、酒販免許がないと金銭の授受ができない、ボトルの持ち帰りができないという酒税法の規則をクリアする必要があります。そこで、酒販免許を有する自分たちが飲食店と観光客の間に入り、決済と配送を行うことで、その制約を乗り越えたサービスの提供が可能になると言います。これにより、飲食店や観光客、酒造メーカーのすべてにメリットが生じるビジネスモデルが構築され、「既存の法規制の中で新たな経済圏を創出し、観光地における体験価値と経済効果を高める」と期待を込めます。
また、購入一本ごとに紹介料が飲食店へ還元される仕組みにより、観光客が投げ銭のようなかたちで訪れた地域を支援できるという魅力も語られました。
「今この瞬間の感動を捉える」ことが自分たちが一番に目指す価値であるとし、「飲食店と観光客の機会損失を解消し、お土産市場全体の底上げになっていきたい」と目標が語られ、プレゼンは締めくくられました。
審査員長の福留氏は「非常に網羅的で、ビジネスプランとして出来上がりつつあった」と賛辞を送りました。
<受賞者コメント>
ありがとうございました。友人とエントリーしたビジコンで受賞できたことがすごく嬉しいです。振り返ると、メンタリングに怯えながら、ああでもないこうでもないとアイデアを出し合っていた時間がとても楽しかったです。このような貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。(垣内氏)

あなたも夢をカタチに。ぜひmark MEIZANへ!
審査員の方々、ご登壇された方々、ご参加いただき誠にありがとうございました。
世代も職業も異なる参加者同士がお互いのアイデアや意見に触れながら、ビジネスプランをブラッシュアップする過程を共にできたことは、大きな刺激となり貴重な経験となったのではないでしょうか。
一人では思いつかなかった発想や気づけなかった視点も、誰かに話すことでヒントを得られ、アイデアはさらに充実し、可能性も広がります。
新しいことに挑戦するには勇気がいるものです。mark MEKZANは夢に向かって一歩を踏み出したい皆さんをサポートする体制を整えています。起業家に限らず、クリエイターやエンジニアの相談も行っています!
今回参加された皆さんのように、次はあなたも、夢をかたちにする一歩を踏み出してみませんか?mark MEIZANでお待ちしています!
